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お茶かけごはん と ねこまんま

お茶かけごはん と ねこまんま

次の一手

次の一手

業者との電話のやりとりと前後して、業者からの書面も届いていた。
 それには、電話で言われたように“立て替え分を返すように”ということ共に“解約手続きあたって教材の状態をみるので、教材一式を送り返すように”と書かれていた。そのことについても消センに問い合わせると、業者の言うとおり教材を返送するようにと言われたのでそれに従った。箱の中には使用したテキストの名前と、CD-ROMにある小さな傷は最初からのものだなどということを書いた文書を一応添えた。
 そしてその夜、私は悪マニサイトを開いた。

“―クーリングオフは無理だといわれました…”

 そう書き込んだ時、私は本気でもう諦めるしかないと思っていた。消センはプロなのだ。プロがそういうものをどうしようもないではないか。
 しかしその書き込みについたレスは、再び私に希望をもたらした。

 消センの職員の能力にも個人差があること。私の担当者は、どうも勉強が追いついていないということ。消センといっても、あくまでも消費者当人のお手伝いをするのであって、本人の意思以上のアドバイスは求められないことがあること。
―などということが、もう少し辛らつな文章で書き込まれていた。

 そして、消センの仲立ちでクーリングオフをする以外に考えられる方法をいくつか提示してくれた。
 一つは、消センの言うとおりここで手を打って話を終わらせる。これは受け入れられない。
 一つは『小額訴訟』
 しかしこれは、いくら簡単とは言え裁判を起こす事には間違いない。また、1万円程度の費用がかかり、クーリングオフ後に手元に戻る予定の金額からするとこれは痛い。
 そしてもう一つは、相談窓口を消センから国民生活センターに変更して、あくまでもクーリングオフを押し通す。

 私は国民生活センターに窓口を変更することに決めた。
 国民生活センター(国セン)は、『各都道府県の消費生活センター等への助言や共同処理等』を行う機関で東京にある。個人からの相談も受け付けてくれるのだが、消センへの助言をするくらいだから、当然消センよりもしっかりした情報と知識を持って対応してくれる。

 調べた番号へ電話すると、落ち着いた声の女性が出た。福岡では滅多に聞くことのない訛りのない日本語だ。業者に電話した時に勝るとも劣らない緊張が背筋に走った。
 私が福岡から電話している事を知ると、その担当者が不審そうに聞いた。
「そちらにはそちらの消費者センターがあるのですが…。そちらへはご相談になりました?」
 そこで今までの経緯を詳しく話した。話の途中で担当者が不満そうにうなったり、溜め息をついたりするのが分かった。
 そして消センの担当者が犯した過ちを教えてくれた。
 最初に業者に私本人から電話を掛けさせた事。教材を返送させた事。クーリングオフはできないだろうと言った事。
 そしてその担当者の名前を聞いた。よほどよろしくないと判断したようだ。

 「クーリングオフは間違いなくできます。そういうことでしたら、担当をこちらに変更できます。ただ、いくつか確認しなければなりませんが…。」

・窓口を切り替えるという事を、消センに連絡しなければならない。
・窓口を変えたことで、業者が態度を硬化させ、結果裁判ということにならないとは限らない。それを覚悟できるか。

 裁判にならないとも限らない。
 さすがに一瞬躊躇した。しかし「間違いなく」クーリングオフができると断言してくれるこの担当者を信じることにした。


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